概要

目的

脳卒中や心臓血管病といった循環器疾患の診療において抗血栓療法(抗血小板療法、抗凝固療法)が果たす役割は、年を追う毎に大きくなっています。この数年でも非弁膜症性心房細動や静脈血栓塞栓症の治療にいくつもの直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の使用が承認され、虚血性心疾患への新たな抗血小板薬も現れました。従来薬と全く異なる作用機序の、新たな抗血栓薬の開発も、続いています。抗血栓薬はそれぞれに作用機序が異なり、より多くの種類をより大量に使えば、それだけ脳卒中などの虚血イベントを起こし難くなります。しかし臨床の現場では、適切な種類の薬のみを適量で使う匙加減が求められます。これは、抗血栓薬を増やせば、その宿命的な副作用である出血合併症も起こり易くなるからです。とくに私たち日本人を含んだアジアの人たちは、他の民族よりも脳出血を起こし易いので、このような匙加減にいっそうの工夫が求められます。

私たちは2003年から2006年にかけて国内18施設共同で、この抗血栓療法に伴う出血合併症の実態を解明すべく、厚生労働省の助成を受けた登録研究を行いました。研究代表者であった峰松一夫先生(現 国立循環器病研究センター病院長)の「突然の出血は患者さんにとっても医療者にとっても棍棒(バット)で撲られるような衝撃」との発言にちなみ、研究名をBAT (Bleeding with Antithrombotic Therapy)と名付けました。BAT研究は日本人抗血栓薬服用者の臨床像を明らかにするのに大いに役立ち、その研究成果は国内の多くのガイドラインにも引用されました。

BATの調査終了から10年を経た今年、私たちは新たにBAT2研究を企画いたしました。日本医療研究開発機構(AMED)の助成を受けて、再び医師主導で国内多施設での登録を始めます。前回よりも多くのご施設に参加していただき、また登録時の頭部MRI所見とその後の出血イベントとの関連を解明することにもこだわって、研究を進めて参ります。登録を始めるための準備も大方整い、今秋からの登録開始を目指しています。BAT2の研究成果が、わが国の多くの循環器疾患患者さんに対する安全で効率的な抗血栓療法の実践に結びつくことを願っています。そのような成果を挙げられるよう、一所懸命に務めます。